センター長ご挨拶

 

 

 「観光の時代」といわれて久しく経ちます。

 

 観光業が日本の基幹産業のひとつになりつつあることは改めて言うまでもありませんし、もちろん山陰地域もその例に漏れません。日本人も外国人も含め、たくさんの観光客にこの地を訪れてほしいですし、また本学学生も今のうちにできるだけ多くの場所に足を運んでほしいと思います。

 

 たしかに観光は産業で、ビジネスで、人々の生業や生活と直結しています。ただ、観光人類学を専門とする立場からいえば、少し違った見方もできます。それは、現在の観光はもはや「楽しい物見遊山」だけではないということです。例えば地域社会の側からすれば、観光は「地域づくり」の目玉となります。地元の若者は、観光を通して自分たちの伝統文化に関心をもつことになります。また訪れるゲストたちは、観光を通してその土地や風土や人を好きになり、ひょっとすると移住してくれるかもしれません。そう考えれば、観光は決してビジネスの手段のみに留まりません。むしろ重要なのは、この「「観光を通して」何を行うか」ともいえます。

 

 山陰地域には豊かな食・自然・文化・風土があります。そして素敵な人たちがたくさんいます。そのすべてが観光資源です。それゆえ、その豊かさを守り、次世代に引き継ぎつつ、持続可能な観光とは何かを問うていかなくてはなりません。島根大学国際観光教育推進センターでは、研究・教育活動を通じて、学生や地域のみなさまと一緒に観光の未来を考えていきたいと考えております。

国際観光教育推進センター長

福井 栄二郎